キヤノンiNSPiC REC

キヤノンが発売した、新しいスタイルのデジカメ。いや、正直、新しいかって言われるとそうでもないかもしれない。トイデジカメで、液晶を持たないパンフォーカスのものっていくつか今までもあったしね。ただ、ガチのカメラメーカが出すのは新しいかもしない。

EVFなし、液晶画面なし。あるのはモード切替ダイヤルとシャッターボタン。使い方を間違えることはなさそうだけれど、モードダイヤルがやや緩いので、腰のベルト通しにひっかけてうろうろしてたら一度勝手に電源が入ってしまっていたことがあったから、その辺はちょっと注意が必要かも。重くしすぎると手軽に使えないので、味付けは難しいかもしれない。

レンズはf2.2固定。3.45mmの超広角。1/3インチセンサーなので、35mmに換算すると25.4mm相当とのこと。広角なので、撮るときも、あまり詳細にフレーミングしても仕方がない感じ。フォーカスも0.5mから先は無限遠まであう、いわゆるパンフォーカスなので、気になったものがあったらとりあえず撮っておくのがこのカメラの在り方だ。どうせ、何が写ったのかは、後で、メモリカードをPCに読み込ませるか、アプリでスマホ上で確認するかしかないのだから。

シャッターボタンは防水の関係でゴムでおおわれている。結構重たいので、人によっては、シャッターが遅いと感じるようだ。私は特に遅いとは感じなかったが、押し込むのに少し時間と力がかかる。押し込むときの力で、写真が右下がりになる傾向があるので、ここはもうちょっと軽くするとか、いっそ、シャッターは裏側か前側につけて、そこを押すようにするほうが良かったかもしれない。次のモデルが出るなら改善点の一つじゃないかと思う。

電池の持ちは、個人的にはあまり気にしていない。開封時に電源をいれても入らなかったので、すっからかんでやってきた様子だが、180分と書かれている満充電までの時間に対して、モバイルバッテリーからちゅるちゅる充電していたのに、40分程度で充電インジケータが消えていた。電池容量間違ってない?

四日ほど使っているが、電池切れの警告は一度だけスマホ上で出た。1000枚とか撮れることになっているようだが、実際には、位置情報を取得するようにしている関係もあってか、おそらくスマホとばんばんBTによる通信をしていて、電池は想像以上に食われているっぽい。でもモバイルバッテリーで充電できるし、なんなら充電しながらでも撮れるので、深刻さはない。ま、電池切れてたらあきらめるのもこのカメラの性格かもしれない。

カメラ単体でも運用できるが、スマホとの連動をさせるのが普通だろう。専用のアプリをGoogle PlayまたはApp Storeからダウンロードしてインストールする。初回は、カメラをリモートモードにして、アプリのインストラクション通り、シャッターを2秒ほど押しっぱなしにしておくと、ペアリングモードに入る。裏側のインジケータが赤と緑に点滅するからすぐわかる。ペアリングが完了すれば、アプリから写真を確認したり、なんならアプリ側から操作して撮影することもできる。撮影時の設定(アスペクト比や写真のサイズ、動画のフレームレートなど)は、接続した状態で、カメラ側のモードダイヤルを撮影ポジション(どれでもいい)に回して行う。この状態でアプリ側でカメラのアイコンをたたくと、設定画面に移行する。わたしは、4:3の画角があまり好きではないし、iNSPiC RECの一応のファインダーは正方形だし、このカメラは撮るときに縦とか横とか考えないで撮るのが正しいと思うので、1:1で、ただしサイズとしてはLサイズで撮るようにした。(最初、この設定のやり方がわからなくて4:3で撮った写真もある。なお設定の仕方は取説に書いてあり、わからなかったのは読まないでいじりはじめたわたしのせい。)

アプリの話が出たので、アプリについて書いておくと、写真の本体への転送が一枚ずつしかできず、かなりいけてない。出かけてばしゃばしゃ撮りまくって、帰ってきてまとめて処理するようなワークフローを考えているなら、このアプリだと苦労する。EOS用のアプリはまとめて選択してダウンロードできるのだから、同じようにしてほしいと思う。

このアプリにはローカルにダウンローダされた写真の管理機能もあるが、右の写真のように、すべての写真が、なぜか1970/1/1の扱いになる。カメラ側にあるときにはきちんと日付が認識されて分類されているし、ダウンロードされた写真も、Google Photosなどで見るとちゃんと日付は認識されているので、アプリのバグだと思われる。いけてないのでこれも早急に直してほしいところだ。尤もローカルにダウンロードされた写真は、Google Photos行きになったあと、消されちゃうんだけれどね。

あと、これはアプリの問題ではないと思うが、接続にしばしば失敗する。多分、本体側のアンテナがしょぼいんだと思う。同じ場所で、EOS M5はサクサクつながるが、iNSPiC RECは失敗するので、電波の状況が厳しいところではだめかもしれない。またBTはつながるが、写真をダウンロードしようとWiFi接続を仕掛けたところで失敗することもあるので、2.4GHz対の込み合っている場所では、あきらめて吉かもしれない。

写真の仕上がりは、パンフォーカスなので、単眼スマホカメラと大差ない感じののっぺり差だ。いや、今どき単眼でもスマホは疑似的にぼかしを入れてくるので、そういう意味では、本当にトイカメラっぽい。

ただ、画素数は1,300万画素あるので、それなりのディテールはある。また、トイカメラのようなわざとらしいビネッティングは見られない。画素サイズは推定で1.3μm2ほどでマイクロフォーサーズの半分ほどだろうか。なので、明るいところではそれなりに写る。色収差も特には見られない。広角なのでパースがつきがちだから歪みはあるかどうか気にしてない。多分気になるほどはない。暗くなるとISO3200まで勝手に上がりそれなりにノイズが乗ってよりトイカメラっぽくなる。

広角なので、時にはぐっと寄って撮ることになるが、寄りすぎると当たり前だがピンがこない。0.5mが最短撮影距離となっているが、多少手前にも被写界深度があるので、もう少し寄れる感じだ。

時には大胆によって撮ると面白い。というか、はじめのうちは思ったよりも全然狙ったものが小さくて愕然とした。慣れるまでバンバンとるべきだろう。あと、撮った後でトリミングしたり傾きなおしたりするレタッチも必要と割り切るべきだろう。

このカメラは、スマホですら、撮るときに行う、フレーミングをあまり考えずに、とにかくまずは撮るという、そういうものなのだ。撮って後のことは後でスマホで見ながら考えるのだ。そういう意味ではアプリにレタッチ機能がないのがやや物足りないが、別に、レタッチ用のアプリはごまんとあるので餅は餅屋ということで、そっちでやればいいのだから、なくてもいいのだろう。むしろ半端なレタッチ機能ならいらないとさえいえるだろう。

で、とにかく撮った写真の中からいくつかを……。傾き補正したり、トリミングしたりはしたけれど、色はそのまま撮った出し。

相模原横山公園にあるモニュメントのわきにある日時計。曇っていたので機能はしていない。かなり寄って撮ったのだけれど、これだけ広く周囲が写っていて、これはこれで面白い。設定を変更する前の4:3で撮影されている。

同じく、横山公園の駐車場のわきに植えられていた菊にぐっと寄って。背後にはメタセコイヤが写っている。晴れていたらもっと鮮やかな感じになったんだろうと思う。

さがみはらグリーンプールのサブプール側に飾られていた雪だるま。クリスマスの飾りつけ。結構ざらざらした感じのノイズが出ているが、拡大しなければあまり気にならない。トイカメラっぽくていい。

赤はかなりこってりとした感じに映る。全体的にフレアがかかっているが、多分、レンズの上にかぶっているプラスチックのカバーが原因じゃないかと思う。これ光学部品じゃないかも?とにかく逆光は得意ではない感じだ。

冬枯れたアジサイを見つけて撮った。寄りすぎてピンが来てないが、むしろそんな感じの方が味があっていい感じだと自画自賛してみた。拡大すると細部がつぶれてまるで絵のように解像している。色合いもかなり鮮やかになっていて、実物の冬枯れっプリからはこの仕上がりは想像できなかった。おそらく、モノや人をきれいに撮ることが主眼となった味付けなんだろう。まあ、これはこれでありなんだろう。

金属の質感もそれなりに捉えている。諧調がもっとつぶれるかと思ったけれど、そんなこともない。晴れた日には諧調も十分に得られそうだ。