GPD WinやGPD Pocketで注目されている、GPDから6インチスクリーンと豊富なインターフェイスを備えた小型PC、GPD Micro PCがリリースされた。
サイズは、VAIO U101よりも小さく、SurfaceGoの短辺よりも狭い幅しかなく携行性に非常に優れる。
USB 3.0のType Aが3つ、MicroSDスロット、給電ポートをかねたUSB PD対応のUSB Type Cx1、HDMIx1、GbE対応のRJ45コネクタx1、φ3.5mmのステレオイヤフォンジャック、そして、RS-232Cポートを持つかなりマニアックな仕様を持つ。
今時のデバイスとしては珍しく、左手前にストラップホールがあり、製品にはストラップが一本ついてきている。左手首に引っかけて両手で保持して親指でタイプすることを想定しているものと思われる。
クラウドファンディングでのパッケージは、本体とPixel3の充電用アダプターとほぼ同じサイズ、ほぼ同じスペックのアダプター、充電用のType Cケーブル、ストラップ、紙ペラ一枚の取説が附属していた。
128GBのM.2 2242SSDをもち、LPDDR4 8GBのメモリ、第8世代の Intel Celeron N4100(4コア)を搭載。Windows 10 Pro(1809)がプレインストールされているが、Ubuntuもサポートしている。
画面は、タッチ非対応の6インチ液晶で、1280x720の解像度がある。色味はやや青みがかっているが、他のデバイスと並べたりしなければさほど気にならない。
応答速度や、視野角、輝度などは十分にあり、小さいことを除けば特に問題は感じない。ブラウザを使っていると縦方向がやや狭く感じるが、そこは割り切るべき所だろう。
このサイズ故、やや特殊な配列のキーボードは、ASCII配列をベースとしているが、数字キーを二段にして作った右端のスペースにタッチパッドを配置している。タッチパッドのボタンは左上部に左右と真ん中のそれが配置されている。
この位置にポインティングデバイスを配置するのは、VAIO U101と同じく、両手で持って、親指タイプをすることを前提としているからだろう。
実際、このサイズとキーピッチなのでタッチタイプは絶望的である。また、キーはかなり重く作られており、この点も親指で押すことを前提としていることがうかがわれる。
いくつかのキーは、[Fn]キーとの組み合わせで実現されている。
[F1]~[F12]のファンクションキーや、[PgUp]/[PgDn]/[Home]/[End]がカーソルキーにマップされているのは、標準的なノートPCでも見られる構成だが、大括弧、中括弧や[Del]も[Fn]とのコンビネーションになっている。
また、こうして縮退した配列であっても押し込めなかったのか、[PrtSc/SysRq]、[Pause/Break]、[Insert]の三つのキーは存在していない。スクリーンショットは[田]+[Shift]+[s]でも撮れるし、なくてもほとんど困らないと思われるが、エディタなどで、上書きと挿入のモード切替に使われることがある[Insert]がないのは、もしかしたら困ることがあるかも知れない。
また、日本人として見逃せないのは、IMEのOn/Offを行う[Alt]+[~]が、右[Alt]が存在しないため、親指タイプでは困難であることだ。
[Shift]のみ左右に用意されているが、[Ctrl]、[Alt]、[Fn]のモードキーは左にしかないため、これらと左半分のキーとのコンビネーションは親指タイプでは困難であることは、考慮しておくべきだろう。
個人的には、Caps2Ctrlで、[CapsLock]を[Ctrl]にしているのと、keyhacを使って、IMEのOn/Offを[Ctrl]+[o]に割り当てている Emacsスタイルでやっているので、この配列でも、この点にはあまり困らない。但し、カーソルを行頭や行末にジャンプさせる[Ctrl]+[a]や[Ctrl]+[e]などの比較的多用しがちなコンビネーションが使いにくいのはどうにもならない。
電源ボタンも、スクリーンを閉めたときの動作も、デフォルトではスリープになっている。サスペンドなどより電池を消費しないモードへの移行が好みなら、この辺は変更する必要があるだろう。通勤時と、あと職場で昼休みに使ったくらいだと、スリープでの運用でも一日は普通に持ちそうな感じではあった。
個人的には、何らかの生体認証を組み込んでおいて欲しかった。Windows10のスクリーンロックを解除するのに一々ピンをいれる必要があるのは、自宅のデスクトップ以外ではこのデバイスだけだ。VAIO Z2(VPCZ21)もSurface Goも、もっというとPCではないが、Pixel3もZenfone3 Laserも指紋認証乃至は顔認証でロック解除可能なので,その点にはやや不満がある。
Surface Goは、そのサイズと重量で携行性に優れかつ、タッチタイプも可能なキーボードカバーがあり、文書作成や電子書籍の閲覧、動画鑑賞などに優れたデバイスだが、キックスタンドゆえに、移動中にたったままはおろか、座っているときの膝上でも、使えないことはないにしても、不安定さ故に、不便であることは間違いなかった。
GPD Micro PCは、親指タイプによって、このSurface Goが苦手とした領域での運用を快適にしてくれる。驚くべきことに、両方のデバイスと、あと20,000mAh超+12,000mAhのモバイルバッテリー、ケーブル類、Surface Go用のデッキ、モバイルルータ、USB PD対応のアダプタx2等々が、小さなボディバッグにすっぽりぴったりと収まるので、両方を持ち歩くのも苦ではないため、適材適所で運用することが可能である。
普通にブラウザとメイラを起動した状態で、4GB程度のメモリを消費していたので8GBを持つGPD Micro PCでは動作にも余裕が感じられる。
このPCでゲームをぐりぐりやることは考えられないので、非常にバランス良く出来ていると感心する。クラウドファンディングは終了しているが、普通に購入できるので、こういった、ユーザとシーンをかなり選ぶ特殊なPCにぐっとくる向きにはお勧めできる製品なのは間違いない。
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