子どものころ、父が買ったカメラが、この YASHICA ELECTRO 35GLです。1973年製で、絞り優先AEを搭載した35mmマニュアルフォーカスのカメラだ。レンズはELECTRO 35の45mmから、少しワイド側に倒した COLOR-YASHINON DX 40mm F/1.7。レンズシャッターを搭載して4秒〜1/500秒で動作する。レンズシャッターなので、フラッシュは全速度で同調。
このカメラが現役で使われていたころ、父以外は、このカメラのすごいところは理解していなかったけれど、絞りさえ合わせてしまえば、AEで失敗無く写真が撮れるのは、おそらくこの当時では中々に画期的だったのではないだろうか。今なら判る。しかも、露出オーバやスローシャッターは警告が、軍艦部とファインダー内にランプで知らせてくれるので、絞りをあわせ損なうことも非常に少なかった。ピンボケ以外の失敗は、子どものぼくらが使ってもほとんど起きなかった。
しかし、時代とともに、AFや、日付の焼きこみ、ズームなどのより多機能なカメラへと、移行していく過程で、このカメラは押入れの奥にしまいこまれ、忘れ去られ、気づいたら、僕の手元に紛れ込んでいた。
デジカメで、写真にはまり込んで、駄作ともいえるようなゴミを撮り散らしているけれど、絞りやシャッタースピード、そして被写界深度の関係などを一通り学んだ後で、この YASHICA ELECTRO 35GLを見ると、なんてよく出来たカメラなんだろうと、感心し、そして、もう一度、火を入れてみたくなった。
元々、壊れたのでしまいこんだわけではなく、動く状態であったが、陳腐化したのでしまいこまれたわけなので、多分、電池を入れれば動くのだろうと思った。シャッターは幸いにも切れるし
これを使って、電池を入れると、きちんと、絞りの警告が出て、シャッタースピードも絞りに応じてゆっくり開くようになった。どうやら、うまく使えそうだ。本当に、センサーもちゃんと動作していて、適正露出を表示してくれているかどうかはわからないけれど。
あとは、フィルムを入れればいいのだけれど、この手の、昭和四十年代のカメラたちは、遮光に、モルトを使っていた関係で、それが、腐っている場合があるのだ。一見すると、無事そうだったこのカメラも、モルトに指で触れると、もろくも崩れた。
なので、新しいモルトを買ってきて、古いのをはがした後に貼り付けた。モルトをはがすのは、アルコールがいいらしいが、今回はオリンパスのEEクリーナを使った。レンズ掃除用に手元に買い置いてあったのと、どこかのサイトで、これがひどく調子がいい
そうして、綺麗にはがしたら、乾かして、新しいモルトを貼り付けていく。このときに、変な隙間が残ったりすれば、フィルムが感光して、怪しい心霊写真の出来上がりになってしまうので、丁寧にやる必要がある。うまく貼れているのかどかは、写真を現像に出してみるまで判らない。
うちの父は、レンズにケンコーのMCフィルタをつけていた。が、粗雑に扱われてきたカメラだけに、フィルターのフレームが歪んでしまっていた。またフィルターも色がついてしまっていたので、新品と交換した。写真下に写っているのは交換された古いフィルターである。
レンズキャップも、紛失してしまっていたので、安いのを買ってきてつけてみた。これで、持ち歩くのがぐっと楽になるに違いない。試し撮り用にと、CENTURIAのISO-400の24枚撮りを買ってきて入れた。生憎、夜の室内では、ほとんど全てのシチュエーションで、スローシャッターの警告が出てしまうので、明日か明後日、ゆっくりじっくり試し撮りをしてみよう。
デジカメの、撮ってすぐ見て、ダメなら捨てて撮り直し、というスタイルは、写真を気軽にしてくれたし、とても楽しくて好きだ。バンバン、シャッターを切れるので、練習にもなる。が、フィルムも現像も、もちろんカメラも高級品だった時代に、じっくりと考えて、一枚に何を写すのかを計画して、ピントを、絞りをあわせて撮った、あのドキドキした緊張感や現像してみるまでわからないというスローな感覚も、なんだか、とってもいいものだと、感じる自分がいる。
コメント