〜すれば安全神話

「Winnyを使わないで」安倍官房長官が国民に呼びかけ

 「情報漏洩を防ぐ最も確実な対策は、PCでWinnyを使わないことです」——。15日、多発するウイルス「Antinny」による情報流出に、安倍晋三官房長官が異例の呼びかけを行なった。

現在の情報流出の最多の要因は確かに、AntinnyなどをはじめとするWinny系のマルウェアによるものですが、情報を盗み出そうとするマルウェアなんてそれこそ、星の数ほどあるわけです。こういう呼びかけは、そもそも意味がないのですが、この呼びかけは意味がないどころか、逆に危険な誤解を生みかねないものだと思います。

意味がない理由は、Winnyを使っているようなヒトの大半は、恐らくは、ある種の違法行為のために使っているのであって、そういうインモラルな人間が、政府の呼びかけに応じて使用を停止するとは思えないということです。だから、「Winnyは情報漏えいのリスクがあるから使用をやめましょう」と呼びかけても、無意味に終わると思います。

そして、この呼びかけがまずいと思うのは、このブログでは繰り返しいっていますが、「〜ならば安全」とか「〜さえすれば安全」なんていうのはないのに、そういうデマを性懲りもなく、また、流しているということです。「絶対安全」があるとすれば、コンピュータから全ての入力を取り払ってしまえば安全、ということくらいでしょうか。まぁ、そんなコンピュータは使い物になりませんが。

Winnyに感染するマルウェア以外にも、いくらでも情報を盗み出すようなツールやバックドアを仕掛けてそれを行なう手立てを与えるようなツールはあるわけで、Winnyを使わないことは、決して「情報漏えいを防ぐ最も確実な対策」ではないのです。まぁ、政府の人間がアイテーに疎いのは今に始まったことではないですが、もう少し勉強してから口ばしって欲しいものです。

そもそも、この種の情報漏えいが起こる根源は、業務に利用するデータを、私物のPCに入れて持って帰る、或いはデータを持ち帰って私物のPCに持ち込むことにあります。何故そんなことになるかというと、そうして、自宅でまで仕事をしないといけない労働環境に問題の根があるわけで、(無駄かもしれないけれど)政治家に期待することとしては、こんなくだらないことをいっている暇があったら、そっちを改善する対策を、ちっとは頭を捻って考えて欲しいってことなのです。