ローマ人の物語(29)

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ローマ人の物語 29 (29) (新潮文庫 し 12-79)
塩野 七生
新潮社 (2007/08)
売り上げランキング: 94

ローマ人の物語文庫版の29巻です。30,31も同時に発売されています。「終わりの始まり」と、題打たれたこの巻から、ローマの没落が語られます。著者は、没落を、五賢帝の四人目、アントニヌス・ピウスの治世から始まったと見て、既に全巻で触れた、アントニヌス・ピウスの治世から語り始めます。なので「第一章 皇帝マルクス・アウレリウス」は、かなりの部分が、アントニヌス・ピウスの治世下の話となっています。

世界史で習った、五賢帝の時代というのは、帝政ローマにあって最も安定し、またその版図も最大となった時代で、きらびやかな時代だとばかり思っていましたが、巻頭のカバーの通貨の説明にあるように、「しかし、国力には眼に見えないものと見えるものがある。(中略)つまり、技術面でも衰えが目立つようになっては、もはや国力は終わりということかもしれない。」わけで、衰えは、考えてみればアタリマエかもしれませんが、その絶頂に始まるものなのでしょう。没落していくローマ。奇しくもその先には、「黄金の魔女が棲む森」の舞台となった時代があるわけですが。