マイノリティという『耐性』

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アップル「iPod」にWindowsウイルス混入--感染源は製造用PC

 Apple Computerは米国時間10月17日、最近出荷された「iPod」の一部に、Windowsウイルスが混在していると警告した。

 Appleによると、米国時間9月12日以降に製造されたごく少数のビデオiPodに、「RavMonE」ウイルスが含まれていたという。この問題に関して受けた報告は25件以下で、同メディアプレーヤーのほかのモデルやMacに影響がおよぶことはないと、Appleは説明している。

 Appleは公式サイトに謝罪を掲載したが、この機に乗じて、OS分野のライバルであるMicrosoftも軽く批判している。

 「想像に難くないと思うが、Windowsがこうしたウイルスに対して強い耐性を持っていないことに腹が立っている。だがそれ以上に、われわれが問題を把握できなかったことを腹立たしく思っている」と、同社のウェブサイトには記されていた。(以下略)

謝罪、みあたらないんですけれど。で、このニュースの誤訳かと思って、原文を見たら、ちゃんと謝罪したって書いてありましたよ(The Cupertino, Calif.-based company apologized on its Web site for the problem, but also used the opportunity to jab at Microsoft, its operating system rival. (以上原文から抜粋))。でも、ひっそり、サポートページの片隅にぽつんとリンクが置いてあるだけで、しかも、そこには、日本人のセンスから見たら「謝罪」に相当するような表記はなし。単に事実関係と、「Windowsがウィルスに耐性が無いのが悪い」というWindowsの所為だからね、ということが書いてあるだけ。なんなんでしょう? 人を揶揄するんじゃなくて、まずは真摯に謝罪すべきじゃないのかな? 毒入りiPod、少ないとはいえ播いちゃったんだから。

確かに、Windowsはウィルスに対する耐性が高いとはいえない。でもそれは、他のOSだって似たり寄ったり。マルウェアはどのOSやアプリにも少なからず存在するセキュリティホールを狙って、悪用して、動作するのだから。

アップルの幹部は、MacOS Xなら、ウィルスに対する耐性が高いとでもいいたいのだろう、この文脈で。だが、技術的に見た場合の「耐性」に、MacOS XとWinodwsとで、飛びぬけて違う点なんてありゃしない。唯一、MacOS Xが勝っているのは、マルウェアの少なさだ。コレこそが「耐性」だ。そういうかもしれない。でもマルウェアが少ないのは、脆弱性が少ないからでもマルウェアが作りにくいからでもない。単に、愉快犯や、自己顕示のため、或いはボット化して、裏ビジネスに使うため、どれをとっても、マルウェアを作る動機は、インストールベースの多さと浅からぬ相関がある。そう、MacOS Xが持っている「耐性」は、突き詰めれば、マイノリティであることに他ならないのだ。ああ、素晴らしきかな、マイノリティOS!

ただ、今はいい。こうやって揶揄できるくらいに、マルウェアによる被害は、圧倒的にWindowsが多い。それは事実だ。だが、アップルは、Firefoxの例を心に留めておくべきだろう。かつて、Firefoxは、「IEに比べてセキュアである」と、派手に宣伝した。ActiveXの扱いなどで、確かに優位な点もあっただろうが、脆弱性と来たら、本質的に、複雑化したソフトウェアが持っていないはずがないといっても過言ではないもので、結局はシェアが拡大を始めると、それを狙われるようになり、必ずしもセキュアではないということを露呈した。

MacOS Xが耐性を持っているようにみえるのは、即ち、シェアが小さく留まっているからに他ならない。今後シェアが順調に伸びれば、当然狙われるだろうことを忘れてはいけない。もし、本気で、アップルがMacOS Xが本質的にマルウェアに対して強い耐性があると思っているとするなら、ユーザは真剣に乗換えを考えた方がいいだろう...FreeBSDあたりへでも。